63歳!
涙のパソコン挑戦記

話は飛躍するが、人類で一番初めにパソコンを所有し使いこなしたのは、紀元前の中国戦国時代の斉(せい)の国の宰相・田文(でんぶん)であろう。田文は戦国四君の一人で諡号(しごう)を孟嘗君(もうしょうくん)といった。

キーボードの上で迷える人形
キーボードの上で迷える人形

孟嘗君といえば…
【鶏鳴狗盗】(けいめいくとう)の故事が有名です。この故事にもあるように鶏の鳴きまねの上手い人、泥棒の名人…等々、一芸に秀でた人達を、3,000人もその屋敷内に召抱えていたそうだ。いわゆる、食客 3,000人といわれているものです。一芸に秀でた人達を3,000人も屋敷うちに住まわせていたということは、パソコンというボックスの中に、3,000余ものソフトが入っているのと同じようなものだ。

オレ流にいえば、孟嘗君こそが、人類史上はじめてパソコンの概念を確立した人だといえる。

いざ、新天地へ!

高齢者がパソコン操作技術の習得にあたって、一番の障害となったのが、以外にも、知らず知らずのうちに積もり積もった「思い込み」と、「ザビはじめてきた肉体」であった。

「思い込み」は、物事に対する考え方や見方、接し方を変えれば簡単に解決する。「ザビはじめてきた肉体」は、慣れという潤滑油をさし続ければ、軽快にとはいかないが、それなりに活躍します。

そして、パソコンにさんざんイジメられた目玉や指先が、どうにかパソコンになじんできたら、次は、車でいうところの路上運転の段階に入ります。

車の運転免許を取得すれば、日常生活の移動手段として、また、行楽や仕事にと、車の用途は無限に広がる。パソコンも同様だ!

でも、喜び勇んでむやみに動きまわってはいけない。車は海の中には入れないので日本の国から出ていくことはないが、パソコンには国境がないのでどこまでも行ってしまう。そう、迷子になって野垂れ死にの危険があるからだ。

パソコンの世界は広くて奥が深い。車に乗って行く先が分からんくなったら地図やガイドブックを見るように、自分はパソコンで何やりたいのかを知るためには、まず、いいガイドさんを探そう。自分自身の目的探しに、パソコン教室に通うのもいいでしょう。

図解 もっとわかりやすい パソコン入門

オレ、近所の書店でパソコンの入門書を買った。これを選んだ理由は、カバーのイラストが気に入ったからである。偶然とは恐ろしいもので、これが、オレにとって相性のいい最高の参考書となった。

エクスメディアの本
エクスメディアの本

パソコンで迷子にならないためには…。

まずは左記の本を見て下さい。エクスメディア社のパソコンの超入門書です。オレにとって、この本はパソコンの初期学習時期の最良の指南書でした。この本にめぐりあわなければ、今日のパソコン人生はなかったといっても過言ではありません。残念ながら、この本の発売元のエクスメディアは、つい最近倒産してしまった。

ちょっと一休み。

さて、オレの現在のパソコン習得レベルは、やっと、文字が思い通りに入力できる程度です。たとえば、「寄ってってー」という単語をローマ字入力できるようになった。これが出来たときは自分自身に拍手をした。それなりにパソコンをかじってきて、それなりのことを覚えた。

思い通りに文章が綴れる…、ここまでくれば「オレはパソコンが出来るぞ」と、胸が張れる日はもうすぐです。ここで手を抜くな。今ここが、これからのパソコン人生にとって最大の分岐点なのです。

昔の都電

昔、オレが高校生のころ都電を乗り継いで学校に通っていた。当時はのんびりしていて、たった一両の車両なのに運転手と車掌の二人が乗務していた。都電の別名をチンチン電車といった。発車のたびに車掌さんが紐を引っ張ってチンチンと鐘をならしたからだ。東京都内を縦横に走っていた都電は、ガタンゴトンと大きな振動音と共に、車体を左右に揺らしながら走りぬけていった。

今では、山手線の11両編成の長い車両を、うら若き小柄なお嬢さんがたった一人で運転している。そのようすを池袋駅で乗車して見たときはわが目を疑った。もちろん車掌さんも乗っているが…。時代が変わった。夢のようである。

その高校の漢文(かんぶん)の先生の言葉が、今でも耳に残っている。「漢文とは、習わないことは絶対に解らないぞ!」って言った。そして「教師の俺だって勉強しないと解らないのだから、ボーッと聞いてるだけのお前等には、なおさら解らないぞ!」だって…。

思えばパソコンもこの漢文と同じである。一つ一つじっくりと階段を登らなくては未来が開かれないのである。今は時間がかかってもいい。ここで費やした時間はあとでしっかり回収できます。パソコンとはそういうものなのだ。

入門書の落とし穴。

パソコン入門書には超特大の落とし穴がある。「早まるな!」入門書自体の問題ではない。我々、読者側の利用の仕方に問題があるのだ。超入門書というヤツは、まるで三歳児用の絵本のようである。漢字が少なくほぼ平仮名で、活字も大きく漫画入りである。

活字に慣れっこになっているおじさん達は、そんな入門書をパラパラと2~3ページめくっただけで妙に安心し、解ったような気になってしまう。ここでパソコン入門書をなめてしまうのが問題なのだ。

エクスメディアの本
エクスメディアの本

うぬぼれの強いオレは、はやばやと「 Excel(エクセル)」に挑戦した。

挑戦自体は悪いことではなかったが、あさはかな考えのおかげでドツボにハマりそうになった。が、そこは自信家のオレ「オレが理解できないのは解説のしかたが悪い」と決めつけた。そんなオレにエクスメディアの皆さんが、丁寧に付き合ったくれたお陰で落ちこぼれずにすみました。ありがとう、エクスメディア!

エクスメディアの書籍を薦めるわけ…。

エクスメディアの書籍を薦める訳をお話しましょう。まず、下記の2枚の用紙をご覧下さい。左側が質問用紙(B5版)で、エクスメディアの本の巻末に綴じ込まれていたもので、右側が解答用紙(A4版)で、エクスメディアから FAX で送付されたものです。

エクスメディアの質問用紙と回答用紙
エクスメディアの質問用紙と回答用紙

上記Aの質問用紙に質問事項を書き込んで、エクスメディア宛に FAX 送信すると、右側のBのような回答用紙で返事がきた。しかも、必ず24時間以内にきたのです。

これって本当に凄いことなのです。

オレは上記の質問用紙を利用して、なんと、延々と150回以上も質問をし続けた。毎回必ず誠実に答えてくれたエクスメディアの「超図解わかりやすいExcel 入門」は、なんと、たったの 1,499 円である。

当時のパソコン教室の受講生の聴講料の相場は、一講座(60分) 1,575 円だった。これを、パソコン講座の講座料と比較してみてください。エクスメディアがいかに凄いことをやっていたかお解かりでしょう。

今、手元には、質問・返答用紙がヤマとある。この束を眺めながら、よくぞここまで…、と自分自身の粘り強さ(?)に驚いている。また、誠意あるエクスメディアの回答には感謝・感謝の気持ちでいっぱいである。

そして、エクスメディアに対し申し訳く思う気持ちもある。こんなやり取りに手間暇をかけすぎたことが倒産の一因ではないかと考えるからだ。なぜなら、最近のこのたぐいの本の出版元は、一回目の質問には必ず回答をよこすが、二回目以降は完全に無視されるからである。

なお、パソコンの勉強なんだから、当然、エクスメディアとの質疑応答はメールでも出来たがオレは FAX のやり取りにこだわった。理由は簡単で、メールのやり方が解らなかったからだ。それは「パソコン超入門」の第6章・メールを楽しもう! で手を抜いたからだ。お粗末! エクスメディアさんゴメン!

エクスメディアは素晴らしい!

それではエクスメディアとの質疑応答の思い出をいくつか…。
オレは、パソコンを習得するうえで致命的ともいえる欠陥がある。それは、横文字(アルファベット)は、ただの記号の文字列としてか認識できないことである。

例えば、下記のような日本語の文章では、

① これは薔薇です。こちらは檸檬である。

この時、オレの脳ミシは下記のように正常に反応します。

① これはバラです。こちらはレモンである。と、

しかし、次のように横文字が混じった文章に対しては…。

② これはTRUEです。こちらはFALSEである。

② これは???です。こちらは???である。…としか反応しない。

だから、② これは TRUE (トゥルー) です。こちらは FALSE (フォルス)である。と、カナ(ルビ)をふらないと先へ進めません。但し、同じカタカナでもバラとレモンはすんなりと頭に入るが、トゥルーとフォルスはいつまでたっても意味不明である。やっかいな頭である。

そんなワケで、新しい横文字に出会うたびにエクスメディアに泣きついた。

2006年10月15日の朝、質問 : 私は横文字が全くダメです。読み方を教えて下さい。と、質問用紙に書いて、エクスメディアあてに FAX をした。

今回もいつものように同日の夕刻(19:58)に、下記のような回答書が送られてきた。赤い下線は、ここでの話を解りやすくするために後から書き入れました。

エクスメディアの質問用紙
エクスメディアの質問用紙

まずは赤丸①と②をご覧下さい。エクスメディアからの回答には、サポートの範囲を超えた質問には答えられません。といいながらも、律儀に答えてくれています。

そして赤丸③を見てください。さらに、さらに、サポートの範囲を超えているといいながら、次善の策も親切に書いてくれています。おもてなしの心が売りの温泉旅館、見習うべし!

オレが回答者なら、何度も何度も同じことを言わせるな、このバカタレが! とキレてしまうだろう。「ググれ、カス!」である。

「ググれ、カス!」の使われ方は、インターネット上の電子掲示板やチャットにおいて、自分で調べることをせずにあれこれと質問をするユーザーに 対して、「ググれ、カス!」と返答することが多かった。

「ググれ、カス!」の意味とは、それぐらい自分でググれ(googleなどの検索エンジンなどを使って自分で調べろ)カス野郎! と言った意味で使われている。※インターネットより一部引用

エクスメディアさんごめんなさい!

パソコン習得の早道は教えを請うことである。教えを請う方法には2ッある。

① まずは、最低限の基本をマスターしてから教えを請う。

それは、「ここが解りません」と、不明な個所を具体的にいえるぐらいの知識を身につけてから、ご教授を願うという考え方である。

② もう1ッは、先ほどの「ググれ、カス!」のカス野郎に徹することだ!

すなわち、このオレが解らないということは、本の書き方が悪い、また、教え方が悪いから何度も聞くんだという考え方である。

②の考え方をとるオレは…。
2006年11月20日の朝、次のように質問用紙に書いて、当然のごとくエクスメディアに FAX をした。

質問 : 市外局番 049 を入力すると 49 となってしまう。どのように入力すれば、049 と表示されるのでしょうか?

早々と同日の夕刻(18:10)に、いつものように返信(回答書)がきた。赤い二重の下線は、ここでの話を解りやすくするために後から書き入れました。

エクスメディアの回答用紙
エクスメディアの回答用紙

これを見て、エクセルをかじったことのある皆さんはどのように思いますか? 文字が小さくて見づらいけどガマンしてください。

オレがエクスメディアの回答者なら「エクセルのイロハぐらい、勉強してから質問しろ!」と怒鳴ったであろう。更に「死ね、馬鹿!」と言ったであろう。そんなことを、おくびにも出さずにヒントをくれたエクスメディアの回答者は立派だ!

これは「入門書には落とし穴がある」ということを地で行った例です。パソコンは手順を踏んで一歩一歩階段を登るように勉強を進めないとグチャグチャになる、という実例です。普通なら「超図解 もっとわかりやすいパソコン超入門」をマスターしてからワード、エクセルへと進みます。

このときワードをおろぬいた私は、エクセルで住所録を作っていた。住所・会社名は難なく書き終えた。そして、つぎは当然のごとく電話番号を書き込んだ。049-×××-0000…と。記入し終わって確認をするとちょっと変、049 が 49 になっていた。そんなわけで、エクスメディアに多大な迷惑をかけてしまった。

本来なら、数式のエクセルに 49 を 049 と書く人はいません。これって常識ですよね。手抜きをした天罰が下ったのです。エクセルに 0 が反映されないのは、電話番号みたいなモノを書くことを想定していないから当然です。

しかし、パソコンは賢い
これは数式の数字じゃなくて、文字扱いですよ~というサイン  ' (アポストロフィー)をつけて「'049」と書いてあげると、「よし、解った」と、049 と文字扱いをしてくれる。素晴らしい!

浜ちゃんもゴメン!

ある日、南伊豆のホテル弓ヶ浜の営業課長の伊豆の浜ちゃんが営業にきた。浜ちゃんは30才までは東京都内でサラリーマンをしていたが、結婚を期に実家のある伊豆下田に戻った。いい環境で子育てをしたいからだそうだ。この浜ちゃんはなかなかのしっかり者で、オレが Excel をやっていることを知ると「顧客管理台帳を作りたいから教えて下さい」といった。

それならば今夜、宿泊先のビジネスホテルで予習をしてこいと、エクスメディアの Excel の本を手渡し、Section 45 を指示した。

翌朝、オレ、パソコンにむかった浜ちゃんの背後から画面をのぞくと指示とは違うことをやっている。なんと顧客管理とは関係のない図形を描いていた。

ゲンコツをもらった浜ちゃん
ゲンコツをもらった浜ちゃん

それを見てオレは、オマエは顧客管理台帳を作りたいと言ったのだろう、なのに、なにを遊んでいるんだといいながら、浜ちゃんの頭をポカリとやった。浜ちゃんは振り向いて、言われた通りにやっています、と本を見開き Section45 を指しながらムッとしていた。

オレ、Section45 にはそんなことは書いてないぞと言いながら、寄こせと本を取り上げ指示した Section の確認をした。

ム、ム、ム! 何だ、何だ? なんと、なんと、Section42 が欠番しており、Section45 が2回も書いてあっただ。浜ちゃんは、オレが指示した Section45 ではなく、別のページの Section45 を勉強したいたのだ。

早速、エクスメディアに間違いを指摘する FAX を送った。

いつものように返事が来た。

エクスメディア
エクスメディアからの回答書

上記、赤い二重下線のところをご覧下さい。驚いたことに、ミスプリを2回も見つけてくれたのでエクスメディアが本をくれるといってきた。本がもらえることに驚いたのではない。ミスプリ発見者のデーターを保存してあったことに驚いたのである。わずか2,000円弱の本なのに、こんなことまでしているなんて…、サービス第一の温泉旅館頑張れ! 世の中かわったぞ!

オレは、エクスメディアから本を貰った。浜ちゃんは、ゲンコツを貰っただけだった! 浜ちゃんもごめんね!

ACCESS入門!

ある日、中禅寺温泉のホテル ミヅウミの新人営業マンの吉沢君がやってきた。新人といっても途中入社で30才のうえである。これまでは宇都宮市内で事務系の仕事をしていたが、自然に近い環境で身体を動かす仕事がしたくて中禅寺温泉に来たそうだ。奥さんの実家が近かったこともあったそうだが…。

エクスメディアのアクセスの本
エクスメディアの本

吉沢君は、伊豆長岡温泉の花山君の広く浅くパソコンのことならんなんでもというタイプとは別のタイプであった。いわば事務系の職場で威力を発揮する実践的なタイプのパソコン使いであった。

オレが Excel をやっているのみた吉沢君は、どうせ勉強するなら ACCESS にしたらと勧めてくれた。理由は、前の職場でアクセスを駆使して事務環境を一新したからだという。20代でやってのけたという。

事務畑の出身で、いつかはパソコンを実践の武器にと考えていたオレは、吉沢君の勧めに飛び乗った。が、結果は出なかった。

答えは簡単である。齧ったがかみ砕けなかったのでる。手に負えなかったので学習を止める理由を探した。これもすぐに答えが出た。我が総案の事務は手作業のほうが圧倒的に有利であったのと、60才を超えたオレに事務を任せてくれる職場なんてないとの結論にいたからです。

吉沢君は残念がったが、彼も旅館の仕事をマスターするのに忙しかったので、 ACCESS の話しはうやむやになった。吉沢君といえば、フロッピーディスクである。オレのパソコンには、フロッピーディスクを使う装置がなかったので、実際にはどんな働きをするのかわからなかったが、小さな小さなレコード盤のようなやつを触った感触が残っている。吉沢君ありがとう!

<完>

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